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煩悩退散!

シンプルライフを目指しています。なのに煩悩(物欲・食欲・承認欲 etc.)は尽きません。そんな煩悩をここで吐き出して成仏させようとする試み。

【読書】カビール・セガール著『貨幣の「新」世界史 ハンムラビ法典からビットコインまで』を読みました

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本書は、「お金」とは何かということについて、生物学、人類学、神経学、歴史、宗教、芸術といった様々な観点から、解説した本です。著者のカビール・セガールは、本書執筆時、J・P・モルガンのバイス・プレジデントという人物で、2008年のリーマン・ショックをきっかけに本書に取り組み始めたそうです。

貨幣の「新」世界史――ハンムラビ法典からビットコインまで

貨幣の「新」世界史――ハンムラビ法典からビットコインまで

一般的に、お金は、物々交換を効率化するために生まれたと言われています。しかし、人類がどのようにお金の概念を獲得し、使うようになったかについて全てが分かっているわけではありません。

本書では、様々な観点から、お金の起源と人類とっての役割について解説をしようと試みています。以下、私が面白いなと思ったところ、それを元に考えたことを書いてみたいと思います。

最近はもっぱらKindle Unlimited対象の本を読んでいましたが、こちらの本は、Kindle Unlimited対象でも、月替りセールでも対象でもありません。

エネルギーとしてのお金

生物学の観点からは、全ての生物が生きていく上で行っているエネルギーの交換と、お金というものの関係を眺めます。生きるために必要なエネルギー自体がお金の原型になったのでは、という考え方です。

麦や米などの穀物は、ある時代にお金として機能しましたが、それはそのまま生きるためのエネルギーとなります。エネルギー密度が高くて保存性がある穀物が、次第にお金としての機能を獲得した可能性は十分考えられますね。

貨幣と負債と贈与経済

今分かっている一番古い貨幣は、紀元前700年頃のリディア王国のものです。一方、それよりも千年以上も古いハンムラビ法典には「債務」に関する記述があるそうです。もしかしたら、貨幣よりも債務の概念の方が先に発達して、そこから貨幣が生まれたのかもしれません。

原始的な社会では、贈り物を贈り合う「贈与経済」で成り立っている社会もありました。現代でも、贈り物や「おごる」という習慣が残っている社会は多いですね。そのような社会では、贈られたら大体同じ価値の物や行動で返さなければなりません。借りは返すというやつです。一種の債務・義務の概念はそこらへんから生まれ、貨幣は、その借りの量を表すものとして生まれてきたのかもしれません。

お金のことを考えると脳はどうなるか

また、神経学の観点からは、お金について人が考えた時の脳の活動から分かることが色々紹介されます。脳は「お金は良いものだ」ということが分かっているということが脳の反応を計測することで分かり始めているそうです。つまり、お金はそれ自体人間の脳を刺激するものとして、既に人類の進化の中に組み込まれている可能性があるのです。

ハードマネーとソフトマネー

歴史では、古代の貨幣から最近の電子通貨まで、お金の歴史から分かることが解説されています。

貨幣の歴史で、特に重要な出来事は、金貨など実物の価値の裏付けのある「ハードマネー」から、紙幣などそのような裏付けのない単なる価値のシンボルとしての「ソフトマネー」への移行です。

ハードマネーを作るには貴重な金属を必要としますので、供給量が制限されがちです。経済を支えるだけの通貨が供給されなければ、通貨が経済の伸びを妨げるということが出てきます。そのため、時の権力者たちは、いくらでも好きな量発行できるソフトマネーの誘惑に負けてきました。それによって、経済を活性化させようとしたのです。

伸びている経済の足かせとならないように通貨の量を増やすのは良いのでしょうが、落ちてきた経済を通貨の量を増やすことでどうにかしようというのは違う気がしますね。

歴史上、ソフトマネーの流通量を増やし過ぎた後には、インフレをコントロールできず国家崩壊が訪れることも多かったようです。2008年のリーマン・ショックから立ち直るため、アメリカや日本も通貨の量をじゃんじゃん増やして対応しようとしてきました。この結果がどうなるのかは、もう数年しないと分からないのでしょうが、私は少し不安です。

いずれにしても、本書を読むと、古今東西多くの国が貨幣について頭を悩ませ、その時その時の解決法を編み出して、なんとかやってきたということが分かります。

今私たちが当たり前と思っている、安定したドルや円の世界もいつまで続くか分からないのです。実際、クレジットカード、電子通貨、最近ではビットコインと次々に新しいお金の形が現れ始めて、今後どうなるかは楽しみなところですね。

宗教とお金

世界中の多くの宗教では、貪欲は悪いことだとされています。金利をとってお金を貸すことなどを禁止している宗教もあります。お金は必要なものであると同時に、構造上問題を起こしやすいものだと、大昔の宗教指導者も見抜いていたのでしょう。

お金をどう使いこなすかということは、人類に課せられた、大きな課題の一つなのです。

まとめ

最初に本書はお金に関する「解説」だと書いたのは、著者自身何かの説でお金の解明をしようとしているのではないからです。様々な専門家の研究などを寄せ集めて、読者の基礎知識を増やすような役割の本を目指しているように感じました。その意味で少し面白みに欠けるかもしれません。

また、この言い方には、少し文句も込められていて、本書の著者がおそらく各トピックを理解して消化しきっていないためか、論理ではなく勢いでなんとなく繋げているなと感じる所が散見されたためです(もちろん単に文章が悪いだけかもしれませんが)。そこは少し残念でした。とても面白いテーマであるだけに、もう少しページ数があってもいいから丁寧に書いて欲しかったです。

とは言え、最後まで飽きずに読めましたので、良書といってもいいと思います。ジャレド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』が好きな人なら、楽しく読めるのではないでしょうか。

文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)

文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)

文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)

文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)