煩悩退散!

シンプルライフを目指しています。なのに煩悩(物欲・食欲・承認欲 etc.)は尽きません。そんな煩悩をここで吐き出して成仏させようとする試み。

【読書】夏井睦著「傷はぜったい消毒するな~生態系としての皮膚の科学~」を読みました。

傷はぜったい消毒するな?生態系としての皮膚の科学? (光文社新書)

Kindle Unlimitedで出ていたので読んでみました。最近では「キズパワーパッド」などの市販品も売られていてそこそこの知名度がある「湿潤治療」のパイオニアの先生による著書。個人的に今、数針縫う傷で治療中なので傷の修復に興味をもって読んでみたところ、思いのほか興味深い本でした。

湿潤治療とは、傷口を消毒しガーゼなどで乾燥させるという従来の傷や火傷の治療とは異なり、傷口から出てくる浸出液(いわゆるジュクジュク)で傷口を湿らせた状態を維持し傷を治すという治療法です。怪我の時に傷口から出てくる浸出液には細胞成長因子が多く含まれているので、それを積極的に利用しようという方法です。

最近では「キズパワーパッド」などの市販品も売られていてそこそこの知名度がある湿潤治療ですが、著者の先生がこの治療法を発表した当初は、従来の治療法を支持する人たちからの風当たりは相当あったそうです。

本書では、従来の消毒をして傷口を乾燥させるという治療法がいかに理にかなっていないのか、そのような理にかなっていない治療法がスタンダードになってしまった歴史的な経緯をわかりやすく説明しています。

科学において、従来の理論が新しい革新的な理論でガラッと置き換わっていく過程は、パラダイムシフトとも呼ばれます。本書の後半では、パラダイムシフトが起きる時の既存勢力の反応や、新しいアイデアが受け入れられていく過程を、傷口治療という分野においてパラダイムシフトを起こした(起こしつつある?)著者の経験も交えて解説されています。

上記のところまででもかなり読み応えがあり、とても面白い本でしたが、私が特に面白く感じたのが最後の章です。

そこでは、皮膚に神経伝達物質が含まれていること、その神経伝達物質を「外から」与えてやると傷の治りが早くなる理由、またそもそも本書の主題である湿潤療法がなぜ良い治療法なのかを、進化論的な皮膚の成り立ちから説明しようとする仮説を提示しています。

私はこのブログでも何回か書いていますが、考古学的な話が好きで、上記の話も人体に関する考古学という感じがしてとても興味深く読むことができました。

ちなみに私が今治療を受けている先生は、従来治療と湿潤治療の間くらいといった感じでしょうか。

治療の際、傷口は消毒せず生理食塩水だけできれいにしているようでしたので、その点では湿潤治療の精神が取り入れられているようですが、ガーゼは使っているので傷は乾燥させる派のような気がします。シャワーはOKで、ガーゼは毎日変えるよう指示されたのですが、傷口を消毒しろとは指示されませんでした。しかし、自分で勝手に消毒が必要と思い込んで最初の一週間くらいはガーゼを変えるときに傷口を消毒をしてしまっていました。本書を読んだ今ではその消毒は傷の治りを遅くしていたのではないかなと少し後悔しています。私自身、古い常識にとらわれてしまっていたようです。

今回自分が傷の治療をすることになり、意外に傷が大きくこんなので本当に治るのかと疑問に思い、ネットで色々調べていくうちに湿潤治療を知り、この本にたどり着きました。自分の傷にも湿潤治療をしてほしかったなあと思う反面、傷の状態によって適切な治療は変わるということで、担当の先生の言うとおりに頑張ってみようという気持ちもあり、多少の葛藤がありましたが、先生によるといい感じで治ってきているそうで良かったです。

私の今回の怪我はそうは言っても軽い怪我の部類だと思うのですが、これがもっと深刻な怪我や病気なら、最新の治療を求めて先生を選びたいという気持ちがもっと強くなる気がします。と同時に、世の中には最新の治療法を謳った怪しい話も多いわけですし、最新治療を求めて遠くの病院に通うよりは、一段劣る治療法でも近場で楽に通える病院で治療した方がトータルでは良いということもあるでしょうし、いずれにしても気苦労は多そうです。

まあ、多くのお医者さんの努力により医療技術は確実に進歩してきていますし、日本では国民皆保険制度によって安価に安心して治療を受けられるわけですし、その幸せを噛みしめるべきなんでしょうね。

傷はぜったい消毒するな?生態系としての皮膚の科学? (光文社新書)

傷はぜったい消毒するな?生態系としての皮膚の科学? (光文社新書)

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