美味しいものは、体に悪いといって槍玉に挙げられることが多いですよね。甘いお菓子やピザ、ステーキ、美味しいものが体にも良かったら、どんなに楽しい世界でしょうか。どうしてそうなっていないのかを考えてみました。
美味しいものってなに?
美味しいものと言えば、ステーキ、ピザ、ソーセージ(全部個人的に好きなものです)。お分かりのように、これらの美味しいものは、カロリーが高く、炭水化物・タンパク質・脂質など人間にとって必須の栄養を多く含むものです。
これは、考え方が逆で、カロリーが高いから栄養素が多いから美味しく感じるという言い方のほうが正しいと思われます。大昔、人間にとっては、とにかく食料を得て生き、子孫を残すことが最重要課題だったからです。大昔に、例えばカロリーの無いコンニャクをとても美味しく感じてそれしか食べない人がいたら絶滅してしたでしょう。
もう一つ、人間が美味しく感じるものに、お酒やコーヒーなどの嗜好品があります。これらの多くは、脳に作用し、好ましい気分を与えるために、人間が美味しく感じるのだと思います。これらは、多く摂り過ぎれば毒になり、依存性もあるにも関わらず、人間は美味しいと感じるように進化してきました。
美味しいのに体に悪いって?
この前、下の記事で、ソーセージなどの加工肉が体に悪いというニュースを取り上げ、それにもかかわらず、食べたいなあということを書きました。
そもそも体に良いとか悪いとか、何を基準に言っているのでしょうか。現代では、体に良いとは(健康に)長生きするのに役立つことと同義になっていると思います。加工肉の例では、発がん性を気にしていますから、最終的には長生きのために悪いと言っているわけです。
つまり、体に良い悪いは、基準によって変わる相対的なものなのです。大昔は、生きて子孫を残すために利点のあるものであったし、一方、現代では、長生きを目的としているため、かつては体に良かった美味しいものが、体に悪いと言われるようになったというわけです。
ソーセージなどの加工肉は、かつては栄養豊富な肉に保存性を与え、タンパク質や脂質の供給を安定化させ、体を作り子孫を残す確率を上げるという点で体に良い食べ物だったのです。
文明が発展し、子孫を残すのに必要な栄養素が十分に取れるようになった現代になって「体に良い=長生きのためになる」に変化したと思われます。
その時、かつては体に良いとされてきたものの中に含まれる長生きを妨げる物質や、食欲を満たすために食べ過ぎてしまって長生きができない(カロリー制限したほうが長生きするということが分かってきています)という弊害の方が問題視されるようになりました。
味覚は、種としての社会的な目的の変化よりも進化が遅いために、以前と同じものを美味しいと感じてしまって、美味しいけど体に悪いという葛藤が生じるようになったのでは無いでしょうか。
なぜ長生きが最重要の目的になったのか
それは、子孫を残した後も生きることが、人間に取って有利に働くことがあったからではないでしょうか。
私は、仮説として、その理由に知的情報の生産を挙げたいと思います。この知識の生産こそ、人間が手に入れた第二の再生産方式で、子孫を残すという肉体的な再生産よりも大きな利益を種に与えてきたのではないでしょうか。現在、世界中のより多くの人が十分な食料を得られるようになったのも、知識・技術のおかげです。
人は、子供を産んで子孫を残した後も、思想や知識を洗練させ、社会に発信していくことができます。それは、ボケない限り死ぬまでいつまででもできますし、より長く生きている人のほうが知識の集積によって高度な情報を発信できる可能性があります。
そういうわけで、現代では、長生きが一番の目的のようになっているのではないでしょうか。
もちろん、短く太く、若いうちに偉大な知的業績を残し、若いうちに死んでいった人もいたでしょう。しかし、それらの人が、もっと長生きしていたらどうでしょう。さらに素晴らしい成果を残したのではないでしょうか。
長生きをして知的情報を発信していこう
以上のようなことを考えてみて、私も、健康に長生きをして知的情報の生産をし続けたいものだと思っています。
みなさんも長生きをして、それぞれの知的情報の生産をしてみると良いのでは無いでしょうか。
もちろん、ここで書いたことは、単に私の勝手な想像に過ぎませんので、正しさを主張するものではありません。こういう疑問に関する研究などの情報をお持ちのかたは、是非教えて下さい。
こんなことを考えるようになったきっかけは、たぶん、こちらの本だと思います。

文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
- 作者: ジャレド・ダイアモンド,倉骨彰
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細かい内容は忘れてしまったのですが、文化や技術は東西には伝わりやすく南北には伝わりにくいのがユーラシア大陸で文明が発達した理由だとか、そういう話が盛りだくさんでとても面白かったので、おすすめです。
あと、この前見かけたこららの本も面白そうです。もしかしたら、この問いに関するヒントも載っていそうです。

人体六〇〇万年史──科学が明かす進化・健康・疾病(上) (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: ダニエル・E・リーバーマン,塩原通緒
- 出版社/メーカー: 早川書房
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