私は、理系で歴史や文学にコンプレックスがあるのか、定期的に歴史や文学に興味を持ち始める時期があります。私は、正に今その時期にきています。そこで、今読みたいと思っている日本の古典・名作(古代〜中世まで)をまとめてみました。
人は、確実に年を取っていくのですが、何年か毎に似たような心境になる時期が巡ってくるようです。また同じことの繰り返しだと思うのではなく、前回に比べて変化した(願わくば成長した)自分の新たな視点で、気持ちも新たに取り組んでみると面白い発見があるかもしれません。
そこで、この記事では、今私が読みたいと思っている古典・名作のうち、古代〜中世までと時代を区切って、5つ選んでみました。近世以降と外国の名作は別途、選んでいきたいと思っています。
では、時代が古い順に
1.古事記(712年 太安万侶)
言わずと知れた、日本最古の歴史書です。口承を元にした変体漢文体で書かれており、和歌の部分は万葉仮名(音を漢字一字で無理やり書く)で書かれています。
例えば、下のサイトではこの変体漢文体の原文が読めます。
http://www.seisaku.bz/kojiki/kojiki_01.html
日本書紀は漢文で書かれていて、古事記は国内向け、日本書紀は対外向けにその時点での日本の歴史を示したものとも言われています。
多くの神話・伝説を含み、史実かどうか怪しいのは当然ですが、当時の日本の人々の信仰や文化を紐解く重要な資料と言えます。
収録されている伝説は、現代でもしばしば言及されたりします。天の岩戸、ヤマタノオロチ、八咫烏、草薙の剣など有名ですね。伝説のストーリーがかなりぶっ飛んでいて、面白いとの噂です。教養として、読んでおくのも良いのではなかと思い、選びました。
青空文庫にも収蔵されていて、無料で読むことができます。
下をクリックすると、縦書きで読めるViewerで起動します。
本も沢山出版されています。買って読むとすれば、下あたりが良さそうと思っています。
2.万葉集(759年)
日本最古の和歌集です。天皇、貴族、防人などの様々な身分の人の歌が4500首以上も収められています。歌風は、素朴で叙事的と言われています。学校でも、古文の時間にいくつかの歌を習ったと思います。
万葉集も、原文では万葉仮名が使われています。
持統天皇の有名な歌
春すぎて 夏来たるらし 白妙の 衣ほしたり 天の香具山
の原文は
春過而 夏来良之 白妙能 衣乾有 天之香来山
となります。ルビをふると
春(はる)過(すぎ)而(て)
夏(なつ)来(きたる)良(ら)之(し)
白(しろ)妙(たえ)能(の)
衣(ころも)乾(ほし)有(たり)
天(あめ)之(の)香(か)来(ぐ)山(やま)
面白いですね。
他に、有名な歌は山部赤人の歌
田子の浦ゆうち出でてみれば真白にそ富士の高嶺に雪は降りける
の原文は
田兒之浦從 打出而見者 眞白衣 不盡能高嶺尓 雪波零家留
です。
現在の日本語の「漢字かな交じり」の源流を感じることができます。
アマゾンで買える本では、下の本が原文も載っていて評価が高いようです(全4巻)。
ここまでの2つは、私が個人的に、考古学的時代〜奈良時代あたりにとてもロマンを感じるので選びました。
3.古今和歌集(905年 紀友則/紀貫之/凡河内躬恒/壬生忠岑)
日本最初の勅撰和歌集(天皇や上皇の命により編集された歌集)です。20巻1100首以上の歌が収められています。歌風は優雅で叙情的と言われています。
私の知っている歌で好きな歌は
人はいさ 心も知らず ふるさとは
花ぞ昔の 香ににほひける(紀貫之)
とか
天の原 ふりさけみれば 春日なる
三笠の山に 出し月かも(阿倍仲麻呂)
です。阿倍仲麻呂は、奈良時代に遣唐使として唐に渡った人で、日本に帰れなくなり、結局、唐で亡くなったそうです。この歌はそのときの望郷の念を歌ったとされるものです。とても優秀な方で、唐で役人として出世し、李白とも親交を持ったそうです。
この歌自体は、万葉集では取り上げられておらず、後世の古今和歌集で取り上げられているというのが面白いですね。
古今和歌集では、下の本が評価が高いようです。
4.徒然草(1331年 吉田兼好)
今で言う「雑記ブログ」ですね。全243段に、作者の無常観を反映した説話や処世訓が書かれています。後世の多くの人に親しまれ、大きな影響を与えました。
つれづれなるまゝに、日ぐらし硯に向かひて、心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく書き付くれば、あやしうこそ物狂ほしけれ。
という書き出しはあまりにも有名です。学校で習う以外の段のほうが面白いとの噂があります。
徒然草といえば、私がフォローしている「徒然草bot」は面白いのでおすすめです。各段を現代風にアレンジして意訳したものを、たまにツイートしてくれます。
出家しない人のツイート
— 吉田兼好 (@tsuredure_bot1) 2016年2月19日
「仏の道に入りたい」
「読経スタート」
「高名なお坊さんから説法なう!」
「日々謙虚に吸収」
出家する人のツイート
「出家した」
(第五十八段)
これなんかは、とても耳が痛いです。
アマゾンで買える本では、下が良さそうです。
5.奥の細道(1702年 松尾芭蕉)
俳人松尾芭蕉が東北や北陸地方(最終地点は岐阜県の大垣)を旅行した際の紀行文です。作品中に多数の俳句が詠み込まれています。
書き出しは
月日は百代の過客にして、行きかふ年も又旅人也
松尾芭蕉は、言うまでもなく日本人が良く知っている俳句を数多く読んだ人です。
奥の細道では
夏草や兵どもが夢の跡
五月雨をあつめて早し最上川
などが有名でしょうか。
以前どこかで聞いて一番心に残っているのが
塚も動けわが泣く声は秋の風
という句です。旅の途中で会うのを楽しみにしていた弟子が去年亡くなったことを聞いて、石川県の金沢から小松に行く途中で詠んだ句だそうです。
ということで、昔から通して読んでみたいと思っている古典です。
アマゾンでは、下の本あたりが良さそうです。

おくのほそ道―現代語訳/曽良随行日記付き (角川ソフィア文庫)
- 作者: 潁原退蔵,尾形仂
- 出版社/メーカー: 角川書店
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まとめ
今読みたい日本の古典を選んでみました。5つのうち3つが詩の作品となってしまいました。
最近、「ゲーテとの対話」という本を読んでいるのですが、その中でゲーテは、詩人なので当然ですが、詩について真剣に語っているのです。私はこれまで、詩?というくらい、詩に無関心だったのですが、それで、少し詩に興味が出てきたのが理由です。
まずは、日本の詩を勉強してみようという気分になったわけです。また、これらの作品ならば、歌・句ごとに独立性が高いので、少しずつ読めそうと思ったからでもあります。
あるいは、情緒的なものに触れて癒やされたいのかもしれません
追記:後で気づいたのですが、今回の選出は少し前に読んでいた下の本にもろに影響されていましたね。ある本を読んで連鎖的に他の本に興味を持つというのも、知識を広げる方法としてはよくあるパターンですね。
参考文献: 新国語便覧