ここ1ヶ月ほど、じっくり時間をかけて『ゲーテとの対話』を読んでいて、昨日の夜に(上)を完読しました。内容がとても良かったので、続けて(中)をアマゾンで買ったのですが、衝撃の事実が判明したのでした…
ゲーテの人間性あふれる名言の数々
『ゲーテとの対話』は、ドイツの巨匠ゲーテの晩年の様子を著者のエッカーマンが日記形式で綴ったものです。この日記が始まる1823年、ゲーテは74歳くらい、エッカーマンは31歳くらいです。この二人の年齢差を頭に入れて読むと、色々イメージがしやすいと思います。
エッカーマンは、親しくゲーテの側にいて、資料の整理・原稿の批評・話し相手などをしています。
私は下の記事で、水木しげるさんがゲーテを信奉し、この本を戦場にまで持っていったということを知りました。この本を読めば、それも納得できます。
水木しげる、最後のインタビュー 「生死について、人間について、自分が抱えていた疑問に答えてくれたのは、ゲーテの言葉だった」 | 賢者の知恵 | 現代ビジネス [講談社]
この本には、大げさではなく、ゲーテの含蓄のある言葉が1ページ毎に出てくるといっても過言ではありません。Kindleのハイライトだらけになります。また、読んでいくと、ゲーテが確固とした、そして、バランスのとれた思想を持っていた人だったという事がよく感じ取れます。
とは言っても、エッカーマンが他の仕事のオファーを受けようとした時、急に機嫌が悪くなったり(読むと分かりますが、エッカーマンへの思いやりでもあるのですが)、自身の「色彩論」に肩入れして、ニュートンの光学をクソミソに批判したりと、人間らしい一面も見せてくれます。
このまえ私は、ゲーテの名言をとって下のような記事を書きましたが、ゲーテ自身はこの本の中で「悪いものは悪い」と結構はっきり言っています。
ただ、これは内輪の会話をエッカーマンが日記に記録したのが後から世に出たものであるし、この本から感じられるゲーテの人間性を考えると、ゲーテが何かを対外的に批判をしたとしても建設的なものであったのではと想像します。
本書では、ゲーテの過去の作品や当時手がけていた作品への言及も多く、興味をそそられました。また当時の文学や芸術、社会情勢の記述も勉強になりますし、他の作家や作品への興味もわかせます(シェークスピア、バイロン、ユーゴー、マンゾーニ 等)。
衝撃の事実が判明
ということで、私はこの本はとても得るものが多いと感じたので、(中)も買って読みつづけることにしました。
と、ここで衝撃の事実が判明します。なんと、この「古典教養文庫」版には3巻目の(下)が無いようなのです(出版作業中?)。
もともと、岩波文庫版もあることは知っていたのですが、Kindle版で古典教養文庫版の方がずいぶん安かったので、こちらを購入したのでした。ただ、(中)では、ゲーテの死までを扱っているようなので、取り敢えずは(中)まで読めば良いかなと思っています。
ちなみに、この古典教養文庫版は、校正が甘い部分が散見されました。気になる人は気になるかもしれません。あとがきには、電子版なので誤植の修正はすぐに対応できるとのことなので、今後の品質向上に期待しています。
追記: 上中下巻を含む「完全版」というものが出たようです。
水木しげるさんが戦地に持っていたのはどの版?
それから、上のインタビュー記事を見ると、水木しげるさんが愛読していたのは岩波文庫であると書いてあります。私は、この本を買う時、そこまで気にしていませんでした。
しかし、今売っている岩波文庫版の訳者の山下肇さんについて調べてみると
『ゲーテとの対話』の翻訳が1968-69年となっていて、水木しげるさんが戦場に持っていけるはずがないんですよね。
そこで、古典教養文庫版の訳者の亀尾英四郎さんを調べてみると
ゲエテとの対話 第1-3 ヨオハン・ペエテル・エツケルマン 春陽堂 1922-27 のち岩波文庫
との記述がありました。ということで、水木しげるさんが読んだのは、おそらく、私が読んでいる古典教養文庫版が元にしている訳者の本のほうですね。
亀尾英四郎さんは、鳥取県米子市出身だそうで、そんなところから水木しげるさんがこの本に興味を持ったのかどうかは分かりませんが、なにか因縁めいたものを感じます。
もしかしたら、水木しげるさんがゲーテについて書いた下の本にそのあたりの事情が書いてあるかもしれません。時間があったらこちらの本も読んでみたいと思っています。