最近、なぜか古典を読みたいという気分が強まっています。ここ数日は、古事記の入門書を読んでいました。今日はこの古事記について書いてみたいと思います。
まずは入門書から始めるのが吉?
私は、新しいことに挑戦する時は、最初に入門書を読んでその分野の用語や概念を勉強するということをよくします。
これまでの経験では、そのようにするほうが、挫折が少ない気がするからです。
今だと、ネットの情報を眺めることで入門書を読むことに代えられることも多いかもしれません。
今回、古事記については、下の『地図とあらすじでわかる!古事記と日本書記』を入門書として選んでみました。

図説 地図とあらすじでわかる!古事記と日本書紀 (青春新書INTELLIGENCE)
- 作者: 坂本勝
- 出版社/メーカー: 青春出版社
- 発売日: 2009/01/07
- メディア: 新書
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この本は、古事記や日本書紀の中のメインの物語を取り上げて、物語の舞台を地図で示しながら、わかりやすく解説を加えています。私は地図好きなので、このような体裁の本は大好きです。地図が唐突に示されて説明が足りないところが多いのは、少し残念に感じましたが、トータルとしては読んで良かったと思える本でした。
二部構成で、第一部が古事記、第二部が日本書紀となっています。古事記と日本書紀はカバーする時代が重ならない所があるのと、重なっている時代でも記述が異なるところがあるので、その差を楽しむという読み方もできそうです。
古事記は奇想天外で壮大なファンタジー
取り敢えず、古事記の部を読み終わったところでの感想は
「なにこれ面白い。」
そこらのファンタジー小説を読むよりも面白いんじゃないでしょうか。
まず、物語の発想が奇想天外すぎます。と同時に、とても人間的です。時系列順に描かれているイベントを挙げてみますと
- イザナキとイザナミの国生み(日本の誕生)
- イザナキの黄泉の国訪問
- 問題児スサノオとアマテラスの天岩屋隠れ
- スサノオのヤマタノオロチ退治と草薙剣発見
- 稲羽の素兎(いなばのしろうさぎ)伝説
- オホナムヂ(オオクニヌシ≒大黒様)とスサノオの試練
- オオクニヌシの国造り(出雲の繁栄)
- オオクニヌシの国譲り(アマテラスが横取り)
- タケミナカタの抵抗(諏訪大社の由来。出雲大社の由来)
- 天孫降臨(高千穂、九州)
- ウミサチビコとヤマサチビコの兄弟対決
- 神武天皇(カムヤマトイハレビコ)の東征(八咫烏)
- 欠史八代
- 祟神天皇(ミマキイリヒコイニエ)と三輪山の神(大神神社)
- 垂仁天皇(イリメイクビコイサチ)とサホビメ
- 物言わぬ御子ホムチワケ
- ヤマトタケルの西征(熊襲、出雲の平定)
- ヤマトタケルの東征(焼津の由来。伊吹山の神の怒り)
- 神功皇后(オキナガタラシヒメ)の新羅遠征
- 応神天皇(ホムダワケ)とアメノヒボコの物語
- 仁徳天皇(オホササギ)と后イハノヒメ
- オホササギの御子たちの兄弟争い
- 雄略天皇(オホハツセ)の台頭と治世(万葉集第一歌の作者)
- オケ(後の仁賢天皇)とヲケ(後の顕宗天皇)
- この後、第33代推古天皇までの簡単な歴史が述べられる
日本人ならさわりくらいは聞いたことがあるかもしれない物語がてんこ盛りです。
これで、日本の国の創造から第33代推古天皇あたりまでの日本の歴史を記しています。物語の舞台は、東北・北海道を除けば日本全国にまたがっていて、とても壮大な物語です。
どうです?読んでみたくなりませんか?
古代日本の失われた歴史を伝える資料
上で私は、古事記はファンタジーとして面白いと書きました。しかし、古事記は全くの創作ではありません。そして、そこに古事記独特の魅力があるような気がします。
もともと古事記以前にも『帝紀』(天皇家に関する歴史)や『旧辞』(諸氏の家伝の歴史)と呼ばれるものがありました。しかし、天武天皇の時代には、諸氏が持つものには既に多くの虚偽が加えられて本来の歴史が失われていたそうです*1。そこで、天武天皇が命じてこれらを再検討・修正して一つの本にしたのが古事記です。
古事記に描かれている神々や天皇は、とても人間的で、争いや殺し合いも平気で行なっています。これは、実在した人物に関する出来事が伝承されたものを元にしているからだと私は考えます。
争いや殺し合いが悪いことだという概念が当時あったとして、古事記を作る時点で天皇家を美化するような殺し合いのない美しい伝説を創作することをしなかったのは、諸氏に伝わる家伝の歴史を、特にそれらの整合する部分は、無視することができなかったからではないでしょうか。
ということで、各地の諸氏に伝わる歴史を最大限に残し、天皇家にも都合が良くなるように繋ぎあわせたものが古事記なのだと想像します。
とはいえ、これだけ古い歴史を短い記述で正確に伝えることはそもそも難しく、多くの歴史研究家が様々な説を唱える余地があるというのも、古事記の面白さです。
まとめ
古事記の入門書を読んで感じた古事記の魅力について書いてみました。
日本という国がどのようにして始まったのか、遠いけれども確実に血がつながっている祖先が古代にどのような生活をしていたかということに思いを馳せるのは、とても楽しいことです。
休日のゆっくりした時間に仕事を忘れて古事記を読んでみるというのも、良いのではないでしょうか。
私は、上の本の日本書紀の部を読んでから、その後、古事記の全文に挑戦してみようと思っています*2。 下の本は既に買ってあります。楽しみだなあ。