この前の記事で挙げた、瞑想の科学的解釈に関係しそうな本の中から、『お釈迦様の脳科学』を読んでみました。
この前の記事はこちらです。
お釈迦様の脳科学
臨時収入があったので、Kindleで600円というお手軽な値段で売っていた本書を購入してみました。認知科学者・計算機科学者であり、天台宗ハワイ別院国際部長という肩書も持つという苫米地英人氏の著書です。
読んでみますと、「脳科学」と謳っているほどには、本書に科学的な記述はありませんでした。個人的には、悟った時に脳がどうなっているのかについての科学的研究の成果も紹介してくれているのかなと期待しておりましたが、そうではなかったようです。
むしろ、仏教や悟りについて、広く著者の視点を紹介するという形式の本でした。
本書では、下のようなトピックを扱っています。
- 最近の仏教ブームへの批判
- 日本仏教への批判
- 元々の仏教に近い上座部仏教と大乗仏教の違い
- 般若心経への批判
- 悟りの正体
上の批判の部分は、大雑把にまとめると、日本に伝わってきた仏教は中国を経由する時に儒教や道教の思想が混合されたものであり、本来の釈迦の教えを伝えていない。そして、現在、スリランカ・タイ・ミャンマーなどで残る上座部仏教の方が、オリジナルの仏教に近い、というものです。
また、よく知られたお経である般若心経は、形式的におかしいことから、中国で作られたお経(偽経)であるという説も述べられています。まだ修行者であるはずの観音菩薩が、悟った人であるはずの舎利子に教えを説いているのが、まずおかしいのだそうです。そして本書によると、有名な「色即是空」という言葉も間違っているのだそうです。著者の考える正しいものも書いてありますので、興味のある方は、本書を読んでみてください。
仏教をたいして勉強していない、般若心経をまともに読んだこともない私が、この説について何らかの信頼性のある判断をすることは難しいと思いますが、ネットを探してみると、当然、般若心経偽経説への反論も当然あって、もっと穏当な解釈をする説もあるようです。
本書中ほどのシュメールのくだりや、儒教とシャーマニズムのくだりは、本書に幾分オカルト的な雰囲気を付け加えてしまっているように感じ、少し残念に思いました。私はもう少しきっちり書かれた本が好みですのでそう感じるのでしょう。お釈迦様は、相手のレベルに合わせて説法をされていたそうなので、本書も、私とは違うタイプの人を対象と考えているのかもしれません。
しかし、本書を読んで得るものもかなりありました。
例えば、悟りとは全てのスコトーマ(盲点、偏見)が無くなった状態であるというものです。その時、自我は無くなり、全てのものを同じように重要だと考えることができるようになります。これは、この前読んだ『自分を変える気づきの瞑想法』にある慈悲の瞑想の「生きとし生けるもの全ての幸せを願う」状態を含んでいます。なるほどなと思いました。
また、お釈迦様は、煩悩をなくせとは言っていなくて、煩悩をコントロールすることが大事だと教えたのだそうです。そして著者は、小さな煩悩を捨て、大きな煩悩を持つように勧めます。小さな煩悩とは、「美味しい焼き肉が食べたい」とか「お金持ちになる」とか言ったことで、本能的な欲望から出てくるものです。大きな欲望とは、「世界から戦争をなくす」とか「世界中から飢餓をなくす」と言ったものです。また、著者はこの大きな煩悩を達成する前に、まず自分が幸せになりなさいとも言います。
さらなる興味の足がかりになった
当初期待した脳科学的な話はほとんど無かったのですが、有用な話も多く、読んで損はありませんでした。すぐには同意できない説も紹介されていましたが、それが逆に自分で更に調べてみたいという興味の足がかりになったことも確かです。
例えば、この前から読みたいと思っている『老子』を更に読みたくなりましたし、儒教についても調べたくなりました。また、初期仏教の経典も読んでみたくなりました。
ということで、最後に、今後読んでみたいと思っている本を紹介してみたいと思います。
老子について
最終的には、原書を読みたいと思っています。これらの二冊は評価が高いようですので、どちらかを。
ただ、まずは上の講談社版のと同じ著者による下の入門書から始めてみるのも良いかなと思っています。

あるがままの生き方のススメ 老荘思想がよくわかる本 (新人物文庫)
- 作者: 金谷治
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 中経出版
- 発売日: 2014/08/15
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儒教とシャーマニズムについて
Wikipediaによると、儒教とシャーマニズムの関連は、白川静の『孔子伝』という本に書かれているようです。
初期仏教の経典
パーリ語で書かれた経典の「小部」に収録されている経典「スッタニパータ」の日本語訳です。
かなり多くのレビューもあり、評価も高そうです。是非読んでみたいです。
同じ著者による、同じく「小部」に収録されている『法句経』の名で知られる経典「ダンマパダ」と「ウダーナヴァルガ」の日本語訳です。
「スッタニパータ」と共に初期仏教の経典のなかでも最古層の部類とされるものです。
また、別の翻訳者のもので、「小部」全体の翻訳も見つけました。こちらはKindle版で、全10冊だそうです。 Kindleオーナーライブラリ対象のようなので、無料で借りられますね。

小部経典 第一巻 (パーリ語原文付)?正田大観 翻訳集 ブッダの福音?
- 作者: 正田大観
- 出版社/メーカー: Evolving
- 発売日: 2015/04/08
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龍樹
龍樹(ナーガールジュナ)は「空」の概念を理論化した二世紀頃のインド仏教(初期大乗仏教)の僧です。その著書は『中論』です。
まとめ
『お釈迦様の脳科学』を読んだ感想と、今後読みたい本をまとめました。またまた、読みたい本が、爆発してしまいました。