この前のKindle本のセールの時に購入した、中村佑介著『みんなのイラスト教室』を読みました。タイトルからは、絵が描けない素人に絵が描けるように教えてくれる本かと勘違いしてしまいそうですが、実際の内容はちょっと違いました。なかなか勉强になる本だったので、紹介してみたいと思います。
本書の構成
本書は、主に絵が既にそこそこ描けてプロのイラストレータを目指している若い人(生徒)の作品を、プロのイラストレーターである著者が講評し、改善のための考え方や技術を示し、そして、実際に著者が手直しをした作品を提示するという形式をしています。各章の最後は、その生徒の近作と感謝の手紙で締められています。
ですので、本書のメインのターゲットは、同じようにプロを目指している若い人ということになるのだろうと思います。本の後半には、美大と専門学校のどちらが良いかといった進路選択の参考になりそうな章もあります。
注意:本書はカラー表示できる端末かアプリで読んで下さい。
プロのイラストレーターの思考
しかし本書は、絵が全く描けない人でもなかなか楽しく読める本だと思います。というのも、プロのイラストレーターがどのような思考や技術をもって仕事をしているかがよく分かるものになっているからです。
特に印象的だったのは、著書が示す様々な技術が、すべて(作家やクライアントの)テーマやメッセージを消費者に正確に伝えるいう根本原理から導かれているということです。
つまり、仕事の最終目的が何なのかをしっかりと意識することが大切だという一般的な考え方の良い例になっているのです。イラストとは関係がない人が読んでも、何かを学んだという気になるのでは無いでしょうか。
嫉妬や劣等感の正体
本書には興味深い考えが多く示されていますが、私が特になるほどと思ったのが「5時間目 嫉妬や劣等感」に書かれていた内容です。
他人が見たら十分上手いものを書いているのに、他の人の作品に嫉妬や劣等感を感じてしまう生徒の質問に著者が答えたものです。
ここで書かれていることは、イラストに限らず作品や著作と呼べるようなものを作る人に共通することだろうと感じました。
人が感動するもの
また、人が共通して感動するのは個性では無く熱意(手間)であるという言葉もそうだなあと思いました。
最近、成果よりも過程を重要視する日本人の働き方が批判されることも多いですが、特に人の心を対象にした仕事では、このことも忘れてはいけないと思います。
お酒でも、ある一定の品質を満たしてしたら、それ以上の美味しさは、そのお酒を作っている人たちの情熱や苦労のストーリーに大きく影響を受けますからね。
まとめ
中村佑介著『みんなのイラスト教室』を読んだ感想を書いてみました。絵の素人でも、興味を持って注意深く読めば、自分にも当てはまる教訓を得られる本だと感じました。もちろん、イラストに興味がある人は、より楽しめると思います。
本書で「コピックのミリペン」と書いていたので、なんだろうと調べてみますと、色んな細さ(ミリ)のものがあるから「ミリペン」と言うのですね。一定の細さの線を引くのに便利で、イラストを描く人の間ではよく使われるものだそうです。
また、下書きを消す時に使う消しゴムとして著者が推奨している「まとまるくん」。摩擦力ではなく粘着力で消すため、下書きの線だけを綺麗に消すのに良いそうです。アマゾンを見たら、本書の著者がレビューを書いていて笑いました。 それほど、この消しゴムを愛しているんですね。私も使ってみたくなりました。