煩悩退散!

シンプルライフを目指しています。なのに煩悩(物欲・食欲・承認欲 etc.)は尽きません。そんな煩悩をここで吐き出して成仏させようとする試み。

古事記の美人びいきのエピソードが酷い


最近、少しずつ『古事記』を読んでいます。まだ、中つ巻の途中までしか読んでいませんが、古事記での「美人びいき」がけっこう酷いです。

この前書いた記事の場面の後に出てくる、垂仁天皇の代の「丹波の四女王」のエピソードもその一つです。

 

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古事記には、「丹波の四女王」の前のエピソードとして「沙本毘古(さほびこ)の反逆」というものがあります。

沙本毘古(さほびこ)の反逆

天皇の后であった沙本毘売(さほびめ)の兄である沙本毘古が、妹をそそのかして天皇を殺そうとするのですが、それは失敗に終わります。

失敗を知った兄は、稲城を作って兵を挙げます。稲城とは、稲穂で作った城で、実った稲に攻撃したり火を着けることは禁忌であることを利用したものです。小さな鳥居を置いておくと、不法投棄が減るみたいな。ちょっと違うか。

しかし、沙本毘売は兄への思いも断ちきれず兄の稲城へと逃げ込みます。悪いことにその時、沙本毘売は妊娠していました。天皇が攻めあぐねているうちに沙本毘売は稲城の中で子供を産んでしまいます。

沙本毘売は天皇に、「この子供を自分の子供と思うならこの子供を引き取ってください」と願い出ます。天皇は、子供の引き渡しの時に沙本毘売も一緒に取り返そうとしますが、失敗してしまいます。

天皇が、「子供の名前は母親が付けるものと決まっている。なんと名づけたら良いか」と問うと、沙本毘売は「稲城が燃えている中で生まれましたので本牟智和気(ほむちわけ)と名づけましょう」と言います(ほ=火)。

また天皇が、「この子は誰が育てたらよいのか」と問うと、沙本毘売は「丹波の兄比売(えひめ)と弟比売(おとひめ)は、心正しい民なのでこれを召し抱えたらよいでしょう」と答えます。

その後天皇は、沙本毘古を討ち、沙本毘売も兄と死をともにします。

さて、ここで生まれた御子、本牟智和気(ほむちわけ)は、大人になっても言葉をしゃべることができませんでした。古事記には、本牟智和気が話すことができるようになった経緯がこの後に語られます。

丹波の四女王の悲しい結末

前置きが長くなりましたが、この本牟智和気の話の後に、「丹波の四女王」の話が続きます。

天皇は、沙本毘売の遺言の通りに、丹波の美智能宇斯(みちのうし)王の4人の娘を召し抱えます。比婆須比売(ひばすひめ)と弟比売、そして、歌凝比売(うたこりひめ)、円野比売(まとのひめ)です。【兄比売がいなくなってしまっていて、混乱があるようです】

しかし、歌凝比売と円野比売は、容姿がとても醜いという理由で故郷に送り返されてしまいます。

歌凝比売は、丹波に帰る途中、これを恥じて自殺を図ります(本文からは生死は不明です)。これが、ある地名の由来として語られます。また、円野比売は、途中で淵に落ちて亡くなってしまいます(たぶんこれも自殺でしょう)。

私は、ここを読んでちょっと酷いんじゃないかなと思いました。そもそも、沙本毘売の遺言は2人(兄比売と弟比売)だけだったのに、何故か4人を召しているんですよね。何か釈然としない気持ちになります。

そういれば、古事記には他にも美人びいきのエピソードがあります。

美人びいきのせいで天皇の寿命が短くなってしまった!

天から降りてきた迩々芸(ににぎ)命の節で語られる物語です。迩々芸は、美しい木花之佐久夜毘売(このはなのさくやびめ)に一目惚れして求婚したところ、その父大山津見神(おおやまつのかみ)は承諾し、姉の石長比売(いわながひめ)も一緒につけてきました。

しかし、迩々芸は、石長比売がひどく醜いという理由で送り返してしまうのです。

大山津見神は、二人を一緒に差し出した理由を次のように語ります。

石長比売をお召になれば、ご子孫の寿命は岩のごとく不動堅固でしょう。木花之佐久夜毘売をお召になれば、ご子孫は桜の花が咲くように栄えるでしょう。そう誓って差し出したのです。今、あなたは木花之佐久夜毘売のみをお召になりましたから、ご子孫の寿命は桜の花の間だけでしょう。

こういうわけで、その後の天皇の寿命が短くなってしまったのでした。

なお、この木花之佐久夜毘売が子供を生む時、火の中で産んだという話が出ています。生まれた子は、火照命(ほでりのみこと)、火須勢理命(ほすせりのみこと)、火遠理命(ほおりのみこと)と名付けられます。

なんとなく、この二つのエピソードは「火」でも繋がっているようにも感じます。偶然でしょうか。

教訓

この二つのエピソードは、後に何かしらの不幸が訪れているという点で、美人びいきは良くないことだよという教訓をこめているようにも感じませんか?

私は、そんな気がします。

また、祖先の神や天皇の行動を直接的には批判は出来ないので、ぎりぎりのところでやんわりと批判しているという印象も受けます。

まとめ

古事記を読んでいて気になった2つの美人びいきのエピソードを紹介してみました。古事記のそれぞれのエピソードは、文字数はそれ程ないのですが、内容は濃いですね。なかなか、すんなりとは読み進められません。 

新版 古事記 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)

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