GWということで、現実から離れて「自給自足」生活を想像するのに役立つ本の紹介第三弾をしてみたいとおもいます。今回紹介するのは、ジョン・シーモア『完全版自給自足の本』です。
黄色の表紙が眩しい大判の本で、タイトルの下には “The Complete Book of Self-sufficiency” と英語のタイトルが書いてあります。
「自給自足」は英語でself-sufficiencyと言うのですね。
さて、本書は「完全版」と銘打っているように自給自足生活で必要な様々なことについてかなり広範囲に解説をした本です。
なお、本書の著者のジョン・シーモアはイギリス人で、イギリスで農場を経営しながら自給自足の生活を実践しているという人です。したがって本書の内容も、古き良きヨーロッバやアメリカの農場の生活を彷彿とさせる内容となっていて、そういう観点で読んでも楽しいと思います。
以前紹介した、『ウォールデン 森の生活』はアメリカの18世紀に自給自足生活をしてみたという本ですから、本書と一緒に読んでみると楽しいかもしれません。
本当に広範囲のことが書かれているので、自給自足生活について色々想像するのに役立ちます。
また本書のもうひとつに特色は、挿絵のイラストが美しく味があることで、本を眺めるだけでも楽しくなると思います。
以下、簡単に各章を紹介してみましょう。
1. 大地を開く
自給自足生活をするには、最初に農地を持っていない場合はまず農地を確保する必要があります。
農地を購入することができればそれでもよいですが、そうでない場合は、自分で開墾する必要があります。
本章では、開墾をする方法、開墾した土地の排水と灌漑を整える方法、木の切り方、柵の作り方などが紹介されています。
また、開墾をした後に行うことになる基本的なことの解説もあります。農耕馬の利用方法、穀物の刈り入れ、パン・ビールの作り方。また、根菜、牧草、油をとる植物について。
2. 家畜を飼う
この章では、家畜についての解説をしています。
牛に関しては、牛の飼い方、バター・チーズの作り方、牛肉の保存食の作り方。
豚に関しては、豚の飼い方、豚の解体方法、ベーコン・ハム・ソーセージの作り方。
鶏に関しては、鶏の飼い方、鶏の解体方法。丸焼きの作り方。
羊に関しては、羊の飼い方、羊毛の刈り方。
最後にミツバチの飼い方。
作物を育てる前に、家畜が来るのはヨーロッパ的ですね。
3. 作物の育て方
この章では、野菜などの作物を育てる方法が解説されています。
土の作り方、種まきと植え付け、冷床と温床の利用、防虫・防鳥の方法、主要な作物の簡単な栽培法と利用法、温室について、四季ごとの畑仕事の概要。また、果樹の栽培の解説もあります。
そして、野菜や果実の保存方法の解説があります。トマトの瓶詰めの作り方、キャベツの塩漬(ザワークラウト)けの作り方、ピクルス、チャツネの作り方、ジャムとシロップの作り方、りんご酒の作り方、ビネガー(酢)の作り方、ワインの作り方。
4. 野生の恵み
この章は、狩猟採集についての解説です。
罠での動物の捕え方、うさぎの解体の方法、魚・貝の取り方と食べ方、野草や果物についてです。
しかし、この章は短くそれ程詳しくはありません。実際、狩猟採集までしなくても自給自足はできそうですし、逆に狩猟採集だけだと自給自足は難しいでしょう。
5. 自然利用のエネルギー
ここでは、省エネルギーについての簡単な解説があります。水力、太陽熱、風力、メタンガスの利用などです。
6. 手作りと手仕事
この章は、かごの作り方、陶器の作り方、糸の作り方、染色と織り方、レンガの作り方、石の加工法、鉄の加工法、木の加工法、家の作り方、多目的オーブン、井戸・池についての解説です。
完全「マニュアル」ではありません
以上紹介した通り、本書は自給自足生活について、非常に広範囲のテーマを扱っているということがわかると思います。
しかし、テーマが広範囲であるため、各項目の説明は十分詳細というわけではありません。特に、最後の4~6章は、駆け足の感が強いです。
「こういうことがある」ということが分かるくらいの詳細度なので、実際に行うには各テーマの専門書をさらに調べたり、自分で試行錯誤する必要がありそうです。
まあ、自給自足は150ページ程の本を一冊読んだだけでマスターできるほど生易しいものではないと思います。相当の修練が必要でしょう。
とはいえ、自給自足生活についてこれほど満遍なく説明した本はないかもしれませんので貴重な本であることは確かです。
まとめ
ジョン・シーモア『完全版自給自足の本』を紹介してみました。(ヨーロッパ風の)自給自足生活を、広範囲に想像することが出来る稀有な本だと思います。
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