この前、99円セールでまとめ買いした雑誌のうちの一冊『Newton 色と光の科学: 名画・有田焼の色彩美から,印刷物・テレビの色まで』を読みました。結構勉強になったので紹介してみたいと思います。
色って普段から常にあるものだからこそ、その原理についてはあまり考えないで生きている人は多いのではないでしょうか。
本書は、色や光についての基本的な科学的知識を、ふんだんなイラストや写真を使いながら解説しています。なぜ、フェルメールの『真珠の耳飾りの少女』は印象的なのか、なぜ有田焼の柿右衛門様式の赤は鮮やかなのか、宝石はどうして色が付いているのか、色素を使わず鮮やかな青色を出す「モルフォ蝶」などなど、色に関する面白い話が満載です。
これで99円とはお買い得でした。
特に面白かった話を紹介してみます。
色相環とは
色相環とは、色を分類・整理することを目的に、円状に並べたものです。様々な種類の色相環が様々な画家、科学者、哲学者の手によって作られてきました。
そういえば、ドイツの詩人ゲーテもニュートンの光学に対抗して『色彩論』という書物を著していますね。『色彩論』にかけるゲーテの情熱は、最近読んだ『ゲーテとの対話』にもよく現れていました。

- 作者: J.W.V.ゲーテ,Johann Wolfgang Von Goethe,木村直司
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2001/03/01
- メディア: 文庫
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後で述べるように、色は人間の主観的なものです。したがって、色々な主観にしたがって色々な色相環を作ることができるわけです。
色相環で有名なのは、マンセルの色相環と呼ばれるもので、赤から紫までの色が波長順に円形に並べられています(ただし、円を閉じる所は、赤と紫の混合色となっています)。
このマンセルの色相環では、円の対角の位置にある色が補色になっています。補色とは、混ぜあわせた時に白色になる関係にある色のことだと定義されているのですが、「白」も主観的なもので、話は少しややこしくまた面白いところでもあります。
色々な芸術作品が、この補色を上手く利用して、印象を深めたり色を鮮やかに見せたりしていることが分かっています。
色の三原色と光の三原色の関係
ここは、本書を読んでいて、一番「なるほど」と思ったところです。
皆さんは、色の三原色と光の三原色という言葉を聞いたことがあると思います。色の三原色は全て混ぜると黒になり、光の三原色は全て混ぜると白になるというあれです。
色の三原色は顔料・インクが関わる絵画や印刷で利用され、光の三原色はテレビなどで利用されています。
光の三原色はわかりやすいです。これは、後で述べるように、人間の目の網膜に赤・緑・青を感じる三種類の細胞があることから来ています。
では、色の三原色とは何なのでしょう。この本には、色の三原色についてとてもわかりやすい説明が書かれています。
色の三原色はシアン・マゼンダ・イエローですが、これらの色の顔料は、それぞれ次のような特性を持っています。
- シアンは光の赤成分を吸収する。残った青と緑が混ざってシアン色になる。
- マゼンダは光の緑成分を吸収する。残った赤と青が混ざってマゼンダ色になる。
- イエローは光の青色成分を吸収する。残った赤と緑が混ざって黄色になる。
ここで、シアンとマゼンダを混ぜた顔料を考えてみると、その部分は光の赤と緑の成分を吸収することになります。つまり、青の光だけが反射されて青色になるわけです。
シアンとマゼンダとイエロー全てを混合すると、赤・緑・青をすべて吸収するので、黒く見えます。
つまり、色の三原色とは光の三原色のどれかを吸収する顔料の色のことだったのです。
このことは、小学校の理科か何かで教えられるのかもしれませんが、私としては全くの初耳で、目からウロコが落ちました。
人間の目の網膜にある光センサー
人間の目の網膜には色を感じる3種類のセンサー細胞があります。赤を感じるL錐体、緑を感じるM錐体、青を感じるS錐体です。
これら3種類のセンサーで、人間は世界の色を感じています。これが、色の三原色の由来です。
また、人間は光の強さに反応する桿体細胞というものも持っています。暗い環境では、錐体細胞の働きが鈍るため、専ら桿体細胞に頼って物を見ることになります。
錐体細胞で面白いのは、この三種の細胞からの信号が直接脳に送られるわけではなく、網膜の中で簡単な「計算」が行われてから、脳に送られるということです。具体的には、「赤と緑どちらに見えるか」「青と黄どちらに見えるか」「白と黒どちらに見えるか」の三種類の計算があることが分かってきているそうです。
ここらへんの構造が、色の心理的にも関係しているようで、興味は尽きません。
なお、人間は色を感じる錐体を600万~800万個、光を感じる桿体細胞を1億2000万個程持っているそうです。今のデジカメは、色を感じる素子の数で言うと、もう人間を追い越しそうなあたりにあるといってもよいのではないでしょうか。
ちなみに、犬には二種類の錐体しかありません。人間とは違う色の世界で生きているわけですね。また、人間では稀に4種類の錐体を持つ人が存在する可能性があるそうです(以前そんなニュース記事を読んだ気がします)。
それにしても、生物って上手いことできていますよね。
まとめ
99円で買った『Newton 色と光の科学: 名画・有田焼の色彩美から,印刷物・テレビの色まで』は、色に関する面白い話が満載で、とてもお買い得でした。色に興味のある方には、オススメです(が、もう元の値段に戻ってしてしまっているようですね)。
GWで読むと書いたのですが、読みきれていません。ちびちび読んでいきたいと思います。
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