煩悩退散!

シンプルライフを目指しています。なのに煩悩(物欲・食欲・承認欲 etc.)は尽きません。そんな煩悩をここで吐き出して成仏させようとする試み。

【読書】『劒岳〈点の記〉』を読み直しています


今、新田次郎の『劒岳〈点の記〉』を読んでいます。時代は日露戦争直後、正確な地図の作成に必要な三角点を設置できずにいた未踏峰があった。立山連峰の劒岳(つるぎだけ)である。参謀本部陸地測量部 柴崎芳太郎(しばざきよしたろう)は、この未踏峰に地元の案内人宇治長次郎らと挑む。

この新田次郎の『劒岳〈点の記〉』は、山岳小説の白眉として知られる小説です。映画化もされましたので、知っている人もいるかもしれません。

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「白眉」とは、特に優れているということ。『三国志』蜀書 馬良伝にある「馬氏の五常」の故事から来ています(5人兄弟の中で特に優れていた四男の馬良の眉に白髪が混じっていたことから)。

白眉 - Wikipedia

未踏峰に挑む登山の描写もさることながら、柴崎芳太郎の着実な仕事ぶり、長次郎の案内人としてのプロフェッショナルな仕事ぶりも見どころです。昔の有能な人はこうだったという感じがひしひしと伝わってきます。今の自分を反省しつつ、勇気ももらえるような小説です。

ちなみに、劒岳(剱岳、剣岳とも書く)は下の写真のような岩山です。普通の人では登れそうもないですよね。それでも、最近では結構な登山客が登山しているそうです。

f:id:skktmlab:20160511151945j:plain (Image from Pixabay)

柴崎らは、単にこの山に登るだけではなく、頂上に測量用の機材を運び上げ、そこに覘標と呼ばれるやぐらを設営しなければなりません。いかに困難なことであるか想像できるでしょう。

この小説を、剱岳登山に関するネット上の情報を見て小説に出てくる地名や地形を追いながら、読み進めています。良い時代ですね。ネットで検索すれば、どんな地形がどういう位置関係にあるのか大体分かります。

そうしていて少し不思議に思ったのが、登場人物の宇治長次郎にちなんで今では「長次郎谷」と書かれる場所の読み方です。これは「ちょうじろうだに」ではなく、「ちょうじろうたん」と読みます。ここらへん一帯では、「谷」を「たん」と読むらしいのです。

長次郎谷はなぜ「ちょうじろんたん」と読む?

「谷」を「たん」と読むといって真っ先に思い出すのが、沖縄の地名です。北谷(ちゃたん)、読谷(よみたん)のように、「谷」を「たん」と読みます。

また、下のYahoo知恵袋の回答を見てみると

山の「たん」とはなんですか?尾根の反対の意味みたいなので、谷ってこ... - Yahoo!知恵袋

富山県には、六谷山(ろくたんやま)、濁谷山(にごりたんやま)、赤谷山(あかたんやま)のように「谷」を「たん」と読む山があるそうです。

手元にある漢字辞典だと、「谷」の読み方は訓で「たに」音で「コク」「ヨク」「ロク」となっています。「たん」という読みは書かれていませんが、普通に考えたら、「たに」が「たん」に変化したのでしょうね。

ちなみに、沖縄の北谷という地名は「きたたに」→「ちたたに」→「ちゃたに」→「ちゃたん」と変化したそうです。

北谷町 - Wikipedia

もう一つ読みたい山岳小説

実は、この『劒岳〈点の記〉』を読むのは二回目です。というのも、この前『エヴェレスト 神々の山嶺』という映画を見て、原作の『神々の山嶺』も素晴らしい山岳小説だということを知り、ふとこの本を思い出して読み直しているのです。

『神々の山嶺』は、映画では時間の制約のためかいくつかの場面で話が飛んでいる印象だったので、小説の方を読んで確認してみたいですね。

神々の山嶺(上) (集英社文庫)

神々の山嶺(上) (集英社文庫)

神々の山嶺(下) (集英社文庫)

神々の山嶺(下) (集英社文庫)

まとめ

新田次郎の『劒岳〈点の記〉』を読みなおしているので、思ったことを書いてみました。なんだか、劒岳は無理としても、立山あたりに登ってみたくなりました。そのためには、まず体力をつけないとだめですね。