Kindle Unlimitedの対象になっていたので、読んでみました。醤油についての基礎知識がコンパクトにまとまっている良い本でした。私は、昔から発酵食品には興味があって知っていることも多かったですが、知らなかったことも多く勉強になりました。

- 作者: 杉村啓
- 出版社/メーカー: 杉村 啓
- 発売日: 2016/07/23
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本書は、醤油についての基礎知識や雑学がコンパクトにまとまった本です。醤油の種類、その製造方法、歴史など、読んでいてとても面白いです。
著者の方は、最近はてブで話題になっていたこちらの記事を書かれた方なのですね。
本書で特に興味深かったのが、醤油の作り方のうち「混合」と「混合醸造」について。
「混合」は醸造した後の醤油にアミノ酸液を混合する方法、「混合醸造」はもろみの段階でアミノ酸液等を混ぜて醸造する方法です。
これらは、こだわり派の人たちからは嫌われるものですが、元はと言えば、戦中・戦後の食糧難の時により少ない原材料で効率的に醤油を作るための苦肉の策だったということです。
食糧難も過ぎ、日本が豊かになると、やっぱり昔の味の方が良かったという原点回帰が起きます。そういう消費者の声を聞いて、現在では多くの醤油メーカーが本来の作り方である本醸造の醤油を普通に作っています。
しかし、本書に「大豆が潤沢に確保できるようになった後もそのまま混合醸造で作り続ける地域もでてきました」とあるように、一時しのぎの作り方の味の方に慣れて好きになってしまう人が出てきたり、メーカーの方もそれでコストが削減できるということから、今でも残り続けるということになっているわけですね。
この構図、どこかで聞いたことがありませんか?
そうです、日本酒での三増酒と純米酒の関係と相似ですね。三増酒も食糧難の時代の苦肉の策としてできたものが、日本が豊かになるに連れて嫌われ、純米酒への原点回帰が起き、それでも残り続けているという構図です。
三増酒の場合は、「この味が良い」と積極的に言う人は少ないかもしれませんが、「アル添すると香りが立つから今だとわざとやっている吟醸酒もある」という形で生き残っていますよね。
醤油も酒も、原材料に麹カビを生やして、発酵させるという点では非常に似ていますから、戦争時には、同じような苦境に立たされたのでしょう。
私は、まあ、どちらかというと原点回帰派ではありますが、今は、どちらも選べる選択肢があるので、声高になにか言うつもりはありません。
日本酒のそこら辺の事情については、こちらの本が詳しいです。

- 作者: 上原浩
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この本は、食料難の時代には酒造技術者としてアル添技術の普及を広める立場であり、後に原点回帰派(純米派)の支えとなったような方による本ですので、主張がはっきりとしていて読んでいて面白いですよ。
それにしても私が感じたのは、戦争がいかに日本を貧しくしたかということです。国が貧しくなったら、伝統的な食品でさえ守れない。日本はたまたま奇跡的に復興が成功したので、復活させることができつつあるように感じますが、美味しいものをこれからも食べ続けたいのであれば、いかに平和を維持して国を豊かにするかということを考えなければいけません。
後は、小ネタとして、スーパーでよく売っている「白だし」というものは「白醤油」という特別に薄い色の醤油を使っているのだそうです(白醤油を使っていないものもあります)。これは、知りませんでした。白醤油は普通の醤油に比べて小麦の割合が多いために、琥珀色の淡い色をしているのだそうです。ちょっと単体でなめてみたいですね。
この他にも、色々と醤油についての雑学が満載なので、醤油に興味のある人にはちょうどよい本ではないでしょうか。
ちなみに、私の好きな醤油は「井上 古式じょうゆ」ですね。この醤油を始めて使った時は衝撃でした。それまで、醤油なんてどれも同じじゃないと思っていた私の考えを改めさせられた思い出の醤油です。

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また、最近では、蕎麦つゆの自作に使った「ヒゲタ 本膳」も好きになりました。

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これで「かえし」を作って、蕎麦つゆを自作し、蕎麦も自分で打って食べていますが、とっても美味しいですよ。醤油(と砂糖とみりんと出汁の組み合わせ)の素晴らしさを再認識した出来事でした。
これらの醤油は、値段も相当ですが、たとえ節約生活をしていても、ここぞという時にはできるだけ使い続けたいと思っています。
まとめ
杉村啓著『醤油手帖 基礎知識編』を読んだ感想を書いてみました。著者は、この基礎知識編以外にも色々醤油の本を書いているそうなので、それらも読んでみたくなりました。