今日のお昼は生パスタにしました。前々から気になっていたマリーノ社の石臼挽きのデュラム・セモリナ粉を購入したので、それを使ってナイフで成形するショートパスタ「ストラッシナーティ」を作ってみました。小麦の香りがはっきりと分かる美味しい生パスタが出来ましたので、レポートしてみたいと思います。
憧れのマリーノ社の石臼挽き小麦粉
私が生パスタを作る上で参考にしている本は、『まいにち食べたい手打ち生パスタ』と『プロのためのパスタ事典』の二冊です。

まいにち食べたい手打ち生パスタ: パスタマシンを使わずに粉から作る、本場イタリア仕込みのレシピ集
- 作者: 金子琴美
- 出版社/メーカー: 誠文堂新光社
- 発売日: 2013/12/02
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る

- 作者: 西口大輔,小池教之,杉原一禎
- 出版社/メーカー: 柴田書店
- 発売日: 2014/04/28
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
これらの本でオススメされている小麦粉に、「カプート社」の小麦粉と「マリーノ社」の小麦粉があります。どちらもイタリアの会社の小麦粉なのですが、輸入物ということで小麦粉としてはかなり高級なものになっています。
そのうち、カプート社の小麦粉については既に購入して使ってみた経験があります。
その時の様子はこちらの記事を御覧ください。
実は、この時買ったカプート社の「クオーコ」という小麦粉(00粉)は、本来ピザに適した小麦粉ということで、これを使ってこんな風にピザを作ってみたりもしています。
(このピザ、結構美味しかったです)
しかし、もう一方の、マリーノ社の小麦粉については、まだ試すことができていませんでした。
というのも、マリーノ社の小麦粉は、カプート社の小麦粉よりさらに高価なためです。
カプート社の小麦粉は安いところを探せば1000円/kg行かないで購入できるのに対して、マリーノ社の小麦粉は、1100円~1400円/kgもします。
それもそのはず、マリーノ社の小麦粉は、なんと小麦粉には珍しく「石臼挽き」で作られているからです。
上の本でも、マリーノ社の石臼挽きの小麦粉は香りが素晴らしいと書かれていて、一度は使ってみたい憧れの小麦粉としてずっと頭の中にありました。
生パスタを数ヶ月作り続けてきて、大体の種類を試し終え、2周目、3周目に入り、自分でもそこそこの生パスタが作れるという自信もでてきました。
というわけで、この機会に、プロも使うという最高級の小麦粉の味というものを一度体験しておくことを目的として、マリーノ社の石臼挽きのデュラム・セモリナ粉と00粉を思い切って購入してみました。

硬質小麦デュラムセモリナ粉 (石臼挽き) 1kg ムリーノ・マリーノ社 イタリア産 (Italian Durum Semolina flour by Mulino Marino)
- 出版社/メーカー: ムリーノ・マリーノ社 イタリア (Mulino Marino Italy)
- メディア: その他
- この商品を含むブログを見る

軟質小麦粉00番 Farina00 1kg ムリーノマリーノ社 イタリア産 (Italian Soft Wheat 00 by Mulino Marino)
- 出版社/メーカー: ムリーノ・マリーノ社 イタリア (Mulino Marino Italy)
- メディア: その他
- この商品を含むブログを見る
個人が購入できる小麦粉としては、最高級の部類に入るのではないでしょうか。
まあ、それでも蕎麦粉と比べたら安いものです。蕎麦の場合も石臼挽きのほうが美味しい蕎麦が打てるということで人気ですが、その場合、良い物になると1700円~2000円/kgになりますからね。
私も、蕎麦打ちの時には1700円/kgくらいの石臼挽きの蕎麦粉を使うことが多いです。
それに、高いとは言っても、1食に使う小麦粉の量は、せいぜい100g。生パスタでも蕎麦でも最高級の粉を使っても、自作するならば粉のコストは120円~200円です。お店で食べることを考えたら安いものですよね。
前置きはこのくらいにして、今日の生パスタ作りの様子を御覧ください。
作成する生パスタは、下の記事で紹介したナイフで成形するショートパスタ「ストラッシナーティ」です。
ソースは、こちらの記事で紹介したキノコのソースに近いオイル系のソースにしました。
トマト系よりもオイル系のソースの方が、パスタ自体の味が分かりやすいかなと思ったためです。
今日の生パスタ作りの様子
材料
ストラッシナーティ:
- デュラム小麦粉(*) 90g(マリーノ社石臼挽き「Sfarinato di grano duro intero」)
- 水 45g (加水率50%)
(*) 下を御覧ください。少し注意があります。
キノコソース:
- 冷凍キノコ(シメジ、エリンギ、マイタケ) 60g
- 自家製パンチェッタ 20g
- トマトジュース 大さじ1
- ニンニク 1片
- オリーブオイル 大さじ1.5 + 小さじ1(仕上げ)
- 乾燥イタリアンパセリ 少々
- 酢小さじ1/2(レモンの代用)
- 白ワイン 小さじ2
- 塩
- 胡椒
ミニトマトが無かったので、代わりにトマトジュース大さじ1でソースに酸味を加えました。また、前回は無かったですが、自家製のパンチェッタを具として加えてみました。こちらで自作した自家製パンチェッタです。
「デュラム・セモリナ粉」という言葉は何を指す?
こちらが購入した、マリーノ社のデュラム・セモリナ粉(左)と00粉(右)です。
袋に書かれているのは、石臼の絵でしょうか。なんとなく高級感が漂っています。
左の小麦粉はデュラム・セモリナ粉にしては、色があまり黄色くないなという印象です。
付いているタグを見てみると、少しおかしなことに気づきました。
製品名がチェックされているのですが、「Sfarinato di grano duro intero」にチェックが入っています。その下には「Semola di grano duro」とあって、おそらくこちらが本来の意味でのデュラム・セモリナ粉だと思うのです。
Goole翻訳で、単語の意味を調べてみると
- "sfarinato" → 小麦粉
- "grano duro" → デュラム小麦
- "intero" → 全粒粉
- "semola" → セモリナ粉
というわけで、今回購入したものは、「デュラム小麦の全粒粉」となります。あれ?本当ににこれはデュラムセモリナ粉なのかな。
袋の裏を見てみても「Sfarinato di grano duro」となっていています。こちらではinteroが抜けています。確かに全粒粉にしては色が白いような気もします。
そして、貼られた日本語のラベルには「デュラムセモリナ粉」とあります。
注文したものと違うものが来た!と怒っているわけではありません。
そもそも、日本ではどうも「デュラム・セモリナ粉」という言葉が厳密な意味で使われていないようなのです。
「デュラム・セモリナ粉」は、デュラム小麦という硬質小麦を、粗挽きした粉(セモリナ)という意味です。
実際、私が最初に購入したパイオニア企画のデュラム・セモリナ粉は、普通の小麦粉に比べてかなりの粗挽きでした。
しかし、上で挙げた生パスタの本では、レシピ中「セモリナ粉」と書いた場合には、一番細かく挽いたたもの(farina di semolaまたはsemola rimacinata)を意味するとあります(プロのためのパスタ事典 p16)。
プロも厳密な意味でのデュラム・セモリナ粉を生パスタに使っているわけでは無いんですね。
この時点でもう粗挽きではないので「セモリナ粉」ではなく「デュラム小麦粉」と書きべきだと思うんですよね。
パスタはデュラム・セモリナ粉という連想が強いので、そういう言葉の使い方になってしまったのかなと想像します。
私がよく使っている「日清自家製パスタ用小麦粉 」は、デュラム小麦が原料ですが、かなり粒子が細かく、袋にもデュラム・セモリナ粉とは書いていません。流石に大企業で不正確な命名はしないということでしょうか。私も、この差に気づいてからこの小麦粉を使った場合には「デュラム小麦粉」と書くようにしてきました。
あるいは、そもそもパスタに使うデュラム・セモリナ粉は粗挽の事ではなく、semola rimacinataあたりの細かいものの事を言っていたんだよということかもしれません。
事実として、マリーノ社のデュラム・セモリナ粉として売られている粉は実際には「デュラム小麦の石臼挽き全粒粉」なので注意が必要だと思いました。
ちょっと脇道にそれてしまいました。まあ、あまり細かいことは気にしてもしょうがないですね。
とにかく、届いたマリーノ社の「デュラム小麦粉の全粒粉」で生パスタを作っていきましょう。
生地をこねる
やはり、色はセモリナ粉にしては白めです。全粒粉とあるだけあって、黒い粒がそこそこ混じっています。
香りをかいでみたら、通常の小麦粉には無いなんとも言えない良い香りがします。少し花のような香りにも感じました。
これが、石臼挽きの力なのでしょうか。
水を少しずつ混ぜていきます。
一つにまとめたところです。いつもの粉よりもボソボソしてまとまりがよくないように感じます。
のし板に移って、こねていきます。
最初はまとまりが悪かったのですが、次第に水分が出てきてじとーとなってまとまるようになってきました。それに伴って、生地の色が、黄色あるいはグレーがかってきました。
生地のこね具合は蕎麦粉にも少し似ているように感じました。石臼挽きの粉に共通する性質があるのかもしれませんね。
かなり固く、こねるのに力が要りましたが、なんとか5分ほどこねました。
ラップをして、15分ほど寝かせます。
こちらは、寝かせた後の状態です。結構黄色くなってきました。この色の変化は面白いですね。
成形
生地を適量とり、太さ1cmの棒状に伸ばします。
この時、今回の粉がいつもの粉とは全く違うことを実感しました。
棒状に伸ばすのがとても楽で、すぐに出来たのです。
後から考えると、グルテンの形成が十分ではないため、伸ばしやすかったのかもしれません。
棒状に伸ばしたら、長さ4cmに切り分けます。
カットした生地を、縦に置き、ナイフを押し付けます。
右方向に引っ張ります。
めくれ上がった生地を、左手で抑えます。
こうしておいて、残りの部分もナイフを押し付けて引っ張って伸ばします。
これは、少し切れてしまいました。こうならないように、力を加減して伸ばします。
こんな感じで、葉っぱのような形のパスタになります。
茹で
茹で時間は、前回のストラッシナーティでは5分半でしたが、今回は、けっこう早めに柔らかくなったので、4分にしました。
ソースと和える
ソースはプチトマトの代わりにトマトジュースを少々入れたので、赤い色が付いています。あまり乳化が出来ていないようだったので茹で汁を加えてよく混ぜると、そこそこ乳化したようです。
ここに茹でたストラッシナーティを入れてよく混ぜたら出来上がりです。
試食
出来ました。
「石臼挽きデュラム小麦のストラッシナーティ パンチェッタときのこのソース」です。
まず、茹で上がったストラッシナーティをそれだけで食べてみた時のことですが、これまで作った生パスタにはなかったとても良い香りがしました。
粉の段階からも香りがしていましたが、茹でるとより一層香りが強くなったようです。
では食べてみましょう。
ソースと絡めると、香りは分かりにくくなりましたが、やはり僅かに香りが感じられる気がします。
これが、「小麦の香り」というものでしょうか。
こんな生パスタは初めてです。小麦粉でこんなに香りが変わってくるのですね。
これが、石臼挽き小麦粉の特徴なのかもしれません。
あるいは全粒粉の特徴という可能性もありますね。ただ、これまでも、たまに全粒粉を混ぜて生パスタを作ったりしていますが、これ程の香りは無かったような。そうすると全粒粉かどうかは関係ないのかな。試しに、今ある全粒粉の香りを嗅いでみましたが、今回のマリーノ社のものとは雲泥の差でした(開封してから相当時間が経っていますので、劣化もあると思いますが)。
香りが素晴らしい一方で、コシは弱いように感じました。
噛むと、少し「もちゃっ」とする感じです。
生地を棒状に伸ばすのがとても簡単だったということを上で書きましたが、たぶんそれはグルテンの形成が弱かったせいかもしれません。
それが、石臼挽きという製法のせいなのか、全粒粉であるからなのかは分かりません。あるいは、こねが足りなかったのかもしれません。
今回実際にこの粉で作ってみて分かりましたが、普通のデュラム・セモリナ粉ともかなり性質が違いますので、扱いには注意が必要だと思います。
なお、輸入元の会社のページによると、この小麦粉には通常のデュラム小麦よりもタンパク質・グルテンが少ない古代の優良品種「セナトーレ・カッペッリ」という特殊な品種の小麦が使われているそうです。それも、原因なのかもしれません。
これはこれで、なんとなくホッとするような優しい食感ではあるのですが、個人的には、もう少しコシがある方が好みです。
コシを出すために、他の小麦粉とブレンドして使ったりしてみるのも良いかもしれないと思いました。
それにしても、この香りは素晴らしいです。この香りを活かしたパスタ作りをしていけたらなと思いました。
まとめ
とても高価なマリーノ社の石臼挽きデュラム小麦粉を使って生パスタを作ってみました。ナイフで葉っぱのような形に成形するストラッシナーティを作ってみたところ、とても香りのよいパスタが出来ました。少しコシが足りないかなと思いましたが、小麦粉によってこんなに香りや食感が変わるということが分かって楽しかったです。小麦粉にこだわりのある方には、一度は使ってみて欲しい小麦粉だと思いました。