本書は、腰痛に関する認知行動療法の様子を、小説という形式をとって解説した本です。少し前に、テレビで認知行動療法というキーワードを知ってどんなものかと興味がわいたので、Amazonで見つけたこの本を読んでみました。
最初は小説形式なんてと思いながら読み始めたのですが、次第に話に引き込まれ、登場人物に感情移入して少しほろっとしたりもしてしまいました。大きく言ってしまえば、人生における困難との付き合い方を教えてくれる本です。今現在特に腰痛に悩んでいない人にも読んでみてほしいなと思える良書でした。
私自身は、ここ数年、軽いぎっくり腰的なものを数ヶ月に一回くらい発症していて(病院に行ったわけではないので正しい病名はわからないのですが)、いずれ本格的な腰痛に悩む時が来るのかもしれないと思っています。なので、腰痛の予防にも興味がありますし、なった場合の対処法にも興味があって、本書を手にとったわけです。
本書に登場する人々は、腰痛で仕事をやめざるを得なくなるほどの重い腰痛で悩んでいる方々で、私のぎっくり腰もどきなど可愛いものだと思ってしまう感じで、それぞれ思い悩んだ結果、認知行動療法を行っているクリニックにたどり着いて、他の同じような悩みを抱えた人たちとグループで認知行動療法を行っていきます。
認知行動療法とは、本書を読んで私が理解したところでは、痛みは脳が感じているのだから心の持ちようを変えることである種の痛みは軽減することができる、という考えに基づいた治療のようです。薬のプラセボでも分かる通り、いわゆる「病気は気から」という現象は存在するということを理解したり、腰痛を100%なくすことはできない、ならばそれと付き合いながらどう人生を生きていくかなどの心の持ち方を、それぞれが習得していきます。
痛みは体の不調を脳に伝えるためにあるので、基本的には無視してはいけないものですが、人体には不完全なところもあって、痛みを間違えて伝えてしまったりもします。テレビで見たのですが、腰が痛いと思っていたら実は悪いのは股関節だったという事例もあるそうです。また、脳の方で痛みの信号を過剰に認識してしまうということもあります。
だから、腰痛で苦しんでいる人にはひどい言い方になるかもしれませんが「気のせい」ということも原因の一つとしてありうるということですね。それは、痛みを感じているという現実を否定するものではなくて、もしそれが痛みの原因であるなら、認知行動療法で効果があるかもしれないということです。
今回この本を読んで、自分の状態をよく観察し、訓練によって脳を変えるという点で、認知行動療法は瞑想やマインドフルネスとも関係がありそうだと感じました。脳科学などの発展によって、新たな治療法が確立しつつある時代に突入したのかもしれません。

- 作者: 伊藤かよこ
- 出版社/メーカー: プレジデント社
- 発売日: 2017/05/31
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